ビタミンCと免疫についてのレビュー
https://www.mdpi.com/2072-6643/9/11/1211
Vitamin C and Immune Function
Anitra C. Carr Nutrients 2017, 9(11), 1211;
ビタミンCと免疫機能に関するレビューです。基礎的な知識として、レビュー多めで読んで行こうと思います。
今回は長くなるので、何日かに分けてご紹介します。
Introduction
・壊血症では、肺炎などの感染症に非常にかかりやすい(7)。
・食事での100~200mg/dayのビタミンCにより、健常人はビタミンCの血中レベルを保つことができ、慢性疾患のリスクの軽減に必要である(11.12)。
・ビタミンCは、生合成および遺伝子調節において、モノオキシゲナーゼおよびジオキシゲナーゼ酵素ファミリーの補因子でもある(18.19)。
・ビタミンCはリシル/プロリルヒドロキシラーゼの補酵素で、コラーゲンの三次構造に必須であり、脂肪酸をミトコンドリア内に輸送するカルニチンの生成の補酵素でもある(19)
・ビタミンCはカテコラミン(ノルエピネフリンなど)やバゾプレシンなどの生成時の補酵素でもある。
・ここ15年の研究で、ビタミンCが、転写因子活性やエピジェネティックマーカーなどの調整を介し、遺伝子転写や細胞シグナル伝達経路の調整に重要な役割があることが明らかになっている。(21.22)
・HIF1αのダウンレギュレーションに必要なプロリル/アスパラギルヒドロキシラーゼはビタミンCが補酵素として利用する(21)
・ビタミンCは水酸化酵素の補酵素としてDNAやヒストンのメチル化を調整する。(22)
免疫システム |
ビタミンCの作用 |
文献 |
表皮におけるバリア |
コラーゲンの生成や安定性を高める |
[30-35] |
活性酸素によるダメージから守る |
[36-40] |
|
角化細胞の分化やバリア脂質の合成を高める |
[41-45] |
|
線維芽細胞の増殖や遊走を高める |
[46,47] |
|
患者において創傷治癒の時間を短縮する |
[48,49] |
|
貪食 (好中球、マクロファージ) |
抗酸化剤としての効果/電子供給 |
[50-53] |
運動性、走化性を高める |
[54-63] |
|
貪食作用、活性酸素の産生を高める |
[64-71] |
|
微生物殺作用を高める |
[54,55,57,58,70,72] |
|
[71,73,74] |
||
壊死,NETosisを減らす |
[73,75] |
|
B/Tリンパ球 |
分化、増殖を高める |
[62,63,76-82] |
抗体価を高める |
[78,83-85] |
|
炎症メディエーター |
サイトカイン生成を調整する |
[75,77,86-94] |
ヒスタミン値を下げる |
[56,61,95-101] |
皮膚のバリア機能と創傷治癒
・皮膚にはミリモル濃度のビタミンCが含まれており、真皮層より表皮に多い(24-26)
・ナトリウム依存性ビタミンCトランスポーター(SVCT)アイソフォーム1および2を介して皮膚に蓄積される(27)。
・ビタミンCはコラーゲンの三次構造を安定化させる水酸化酵素の補酵素として働くだけでなく、線維芽細胞のコラーゲン遺伝子発現を増加させる(31-35)。
・ヒトのビタミンCの介入試験では、皮膚細胞でのビタミンCの取り込みが増加し(26.36)活性酸素除去のうも上がっている(36.37)
・皮膚のビタミンC濃度が上がることにより、環境汚染物質による酸化ストレスから皮膚を守る(38.39)
・この働きはビタミンEと組み合わさると増強される可能性が高い(40.102)
・培養角化細胞にビタミンCを投与すると、分化およびバリア脂質の合成が促進し、結果バリア機能が高まる(41-45)
・重症感染症の動物モデルで、肺上皮のバリア機能不全をビタミンC投与で回復することができる(74)
・ビタミンC依存性(Guloノックアウト)マウスを用いた動物実験で、皮膚のコラーゲン形成に変化はなかった(103)が、創傷後のコラーゲン形成が有意に減少した(46)。
・炎症誘発性メディエーターの発現を減少させ、種々の創傷治癒メディエーターの発現を増強する(46)。
⇨つまりビタミンCは、創傷治癒に、特に必須である。
・線維芽細胞の培養実験において、組織の創傷治癒に必須な線維芽細胞の増殖および遊走を、ビタミンCが遺伝子発現を変化させることにより、促進している(46,47)。
・外科手術後、血中ビタミンCを正常化するため、通常より多い摂取量が必要となり(105)、ビタミンCを含む抗酸化物質により、創傷閉鎖の時間を短縮することができる(48,49,106,107)。
・炎症の初期の段階の間、好中球は創傷部位に移動し、活性酸素種(ROS)および抗菌性タンパク質の放出によって滅菌される[109]。
・好中球は最終的にアポトーシスを受け、マクロファージによって消失し、炎症反応の解消をもたらす。
・糖尿病患者など慢性的に治癒しない創傷では、アポトーシスを受けるはずの好中球が持続し、代わりに壊死細胞死を起こすことで、炎症反応が延長し創傷治癒を妨げている可能性がある(109,110)。
・ビタミンCは、好中球のいくつかの重要な機能に影響を与えている。(炎症メディエーターに対する遊走、マクロファージによる貪食作用および微生物の殺傷作用など)
ビタミンCと白血球の機能について
・白血球は、ビタミンC濃度が高く、血漿の50〜100倍(111-113)。
・白血球は、〜100mg /日でビタミンC飽和濃度に達する(114,115)他の組織は飽和濃度に達するにはさらに多い摂取量を必要とする(116,117)。
・好中球はSVCT2を介してビタミンCを取り込む。典型的には1mM程度(111,118)。
・酸化刺激を加えると、好中球はグルコース輸送体(GLUT)を介して、デヒドロアスコルビン酸(DHA)を非特異的に取りこみ、DHAは細胞内でビタミンCに急速に還元され、10mMレベルに細胞内濃度を高める(118,119)。
・ビタミンCは、抗酸化物質として活性酸素を除去するだけでなく、細胞および膜の酸化を防止するグルタチオンやビタミンEを再生することできる(120)。
・酸化物質と抗酸化物質の生成バランスの変化は、NFκBにより複数のシグナル伝達経路が変化して起こる(121)。
・酸化剤は、NFκBを活性化し、シグナル伝達カスケードを誘発し、酸化種および他の炎症メディエーターの合成を促進する(122,123)。
・ビタミンCは、インビトロ樹状細胞において、酸化物質の生成と、NFκBの活性を抑制し、敗血症Guloノックアウトマウスにおいて、好中球NFκB活性を減弱する(75,124)。
・チオール含有タンパク質は細胞内の酸化還元細胞シグナル伝達経路の調節を中心的に行う [125]。・T細胞において、ビタミンCによる、チオール依存性細胞シグナル伝達および遺伝子発現経路の調整が報告されている(126,127)。
好中球の走行性
・ビタミンC欠乏モルモットの白血球の遊走性は、ビタミンC摂取マウスに比べて劣っていた(54-56.64)。
・重度の感染症では白血球の走化が障害され(129-132)、これは初期の免疫の過刺激により、代償性の抗炎症性および免疫抑制性メディエーター(IL-4、IL-10など)が上昇するためと考えられている(133)が、重症感染症ではビタミンCが枯渇しており(20)、再発感染症においてグラム容量のビタミンC補充で白血球の走化性が回復したり(57-60,65-67)、敗血症が疑われる新生児に400mg /日のビタミンC投与で好中球走化性が劇的に改善された報告がある(134)。
・CGD患者においてグラム用量のビタミンC投与にて、白血球走化性が改善し、感染症状の改善など臨床症状とも関連していた(137-139)。
・CHS(Chediak-Higashi syndrome)の2人の子供の好中球は、200〜500mg /日のビタミンC補充で走化性が改善された(141,142)が、これはすべての場合において当てはまるわけではなかった(140,143)。
・ビタミンCは微小管の安定化に寄与すると報告されており(146)、これらは、微小管重合(144,145)および微小管(146)への影響を介して部分的に媒介されると考えられている。
・健康なボランティアに対する食事/グラム容量のビタミンC投与でも白血球の遊走性が強化されることが示されている(61-63,147)
・ビタミンCが<50 μM などの低下している人では、~250 mg/dayのビタミンC投与で、20% 走化性が改善したり(147)、高齢女性でビタミンC1g/dayとビタミンEの投与で、走化性を含む好中球機能の改善が認められた(148)