ビタミンCと免疫についてのレビュー②
https://www.mdpi.com/2072-6643/9/11/1211
Vitamin C and Immune Function
Anitra C. Carr Nutrients 2017, 9(11), 1211;
ビタミンCと免疫機能に関するレビュー、長いので2日目です。
なんとリファレンスが256個もあります...
貪食と微生物への殺傷効果
・ビタミンC欠乏モルモットから単離した好中球は、微生物を死滅させる能力が著しく損なわれており(54,55,70)、貪食作用やROSの生成が低下している(68-70)。
・ヒトでは、ビタミンC欠乏状態のボランティアの好中球ではROSの生成が低下しており、ビタミンCの補給後で20%増強することができた(147)
・高齢者にビタミンCとEを補充することで、貪食能およびROS生成を増加させることができた(148)。
・再発感染(57,58,66,67,72)やCGD、CHSなど遺伝的原因がある(138,139,141,143,150)患者でも、グラム用量のビタミンC投与で、好中球の殺菌/貪食作用を、有意に長期的に改善することができた。
・しかしいくつかの研究では、CGDやCHS患者へのビタミンC補充による、抗真菌、抗菌効果について、有意な効果が認められなかったという結果もある(140.151)。
・これらの違いは、ビタミンC投与前のビタミンC値による違い(記載されていない研究が多い)や、微生物による酸化メカニズムへの感受性の違い(Staphylococcus aureusは酸化に弱いなど)などが考えられる。
・重症感染症(敗血症など)では貪食能やROS生成が低下しており(153)、貪食能の低下は死亡率と関連している(154)。
・院内感染前に院内感染重症患者の好中球殺傷能力が低下していることが観察された(155)。
・カスパーぜはホスファチジルセリンの暴露で増加し、マクロファージによる細胞の取り込みを促進する鍵となる酵素である(162)
・カスパーぜはチオール依存性酵素で、好中球により生成されるROSにより、感受性高く不活化される(163.164)。(⇨ビタミンCがROSを還元することによるアポトーシスプロセスの保護が期待される。)
・インビトロでは、ヒト好中球にビタミンCを負荷すると、大腸菌が媒介する好中球のアポトーシスを増強する(71)
・ビタミンC欠損Guloマウスから単離した好中球はアポトーシスを弱め(75)、代わりに炎症部位に持続し、壊死性細胞死を起こした(73)。
・さらに、敗血症動物モデルにおいてビタミンC投与は、これらの動物の肺における好中球の数を減少させた(74)。
・多くの研究において、重症感染症患者の好中球アポトーシスの減弱が報告されており(165-172)、アポトーシスの遅延は重症度に関連している(173,174)
・重症敗血症患者でビタミンC投与が好中球アポトーシスに及ぼす影響を調べた論文は1件のみで、腹部外科術後の敗血症患者に450mg/dayのビタミンCを投与し、カスパーゼ3タンパクレベルを低下させたことを報告している(178)(カスパーゼ活性や好中球のアポトーシスは評価されなかった。)
好中球壊死とNETosis
・アポトーシスを起こせない好中球は、代わりに壊死細胞死を起こし、プロテアーゼなど毒性細胞内成分を放出し、広範な組織損傷を引き起こす(179,180)。また好中球DNA、ヒストン、および酵素を含む好中球細胞外トラップ(NET)を放出する(181)。
・敗血症患者では、無細胞DNAのレベルが有意に上昇している(184,187)。
・ビタミンC欠損Guloノックアウトマウスでは、肺におけるNETの増強や無細胞DNAの増加が認められた(75)。またこれらのマーカーはビタミンC投与で減弱した。(無細胞DNAは、壊死組織由来であり、好中球DNAに特異的ではないことに留意すべきである。)
・インビトロのヒト好中球にビタミンC投与すると、ホルボールエステル誘発性NETosisが減弱した(75)。
・HIF-1αは、低酸素下での好中球のアポトーシスを遅らせる (189)。
・ビタミンCは、鉄含有ジオキシゲナーゼ酵素の補酵素であり、HIF-1α値/活性を調節する(190)。(この酵素は、HIF-1αの分解を促進し、HIF-1α活性をダウンレギュレートする。)
・ビタミンC欠損Guloノックアウトマウスでは、正常酸素状態下で、HIF-1αのアップレギュレーション、好中球アポトーシスおよびマクロファージによるクリアランスの低下が観察された(73)。
・HIF-1αは、NET生成の調節因子とも考えられており(191)、ビタミンCがHIF-1αを介してNETの低下に貢献するメカニズムもありうる(75)。
リンパ球の機能
・B/Tリンパ球は、SVCTを介してビタミンCを取り込む(192,193)。
・in vitroでは、ビタミンCにより、
・リンパ球の増殖促進(76,77)
・抗体産生の増強(78)
・細胞死刺激に対する抵抗性(195)
・未成熟T細胞の発達分化および成熟(76,79)
・成熟および未熟ナチュラルキラー細胞の増殖および分化(196)
・ヒトの介入研究では、ビタミンC投与で免疫グロブリン(IgM、IgG、IgA)が高くなったと報告されているが(85)、関連が認められない研究もある(62)
・低用量のビタミンCを喘息の子供や健康なボランティアに経口/静脈投与し、マイトジェン誘発性のTリンパ球の増殖を生体外で測定した(62.63.81)。
・高齢者へのビタミンC(80)、およびビタミンA/Eとの組み合わせで、リンパ球増殖を増強することも示されている(148,197)。
・ビタミンC投与により、毒性物質に暴露されたリンパ球機能を正常に回復した(198)。
・Guloノックアウトマウスに、200mg / kgのビタミンC非経口投与で、制御性T細胞(Tregs)(敗血症で観察される)の免疫抑制を阻害した。(Treg増殖を増強し、転写因子や抗原、サイトカインの発現を阻害することによってTregの負の免疫調節を阻害した)(89)。
・ビタミンCはメチル化DNAとヒストンを水酸化する、鉄含有ジオキシゲナーゼの補酵素であり、エピジェネティックな制御に関与している(22,201)。
・能動的DNA脱メチル化機構(TET)酵素は、メチル化シトシン残基をヒドロキシル化し、メチル化残基の除去を容易にする(202)。
・ビタミンCがTETおよびヒストン脱メチル化を含むエピジェネティック機構を介してT細胞の成熟を調節していることを示唆している(79,199,200)。