増田陽子のビタミンCブログ

ビタミンCから、分子栄養学や機能性医学、予防医学、アンチエイジングの世界を知りました。ビタミンC療法のメッカであるリオルダンクリニックで勉強中です。勉強したことの記録ですが、読んだもの全てをまとめているわけではなく、勉強になったことを書き出している感じです。

心筋虚血/虚血再灌流障害に対する高容量ビタミンC投与についてのレビュー

https://ccforum.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/s13054-018-1996-y

Making sense of early high-dose intravenous vitamin C in ischemia/reperfusion injury

Spoelstra-de Man et al. Critical Care (2018)22:70

 

救急、集中治療の雑誌の、今年のレビューです。

心筋虚血/虚血再灌流障害に対する高容量ビタミンC投与についてです。

 

 

・ビタミンCは、PhaseⅠの小規模の試験において、RCTで敗血症性臓器不全からの回復を早め(3)、敗血症性ショックの患者の死亡率を下げた(4)が、

・これは敗血症や虚血再灌流障害では大量のROSが発生し、ミトコンドリア機能不全を引き起こすからで、

同様に心停止後にも大量のROSが発生するため、ビタミンCが効果があるのではないか、というレビュー

 

・心停止後ROSが発生するが、脳や心臓は代謝が高い臓器であるため、有害な影響を受けやすい。

 

ビタミンCの低下

・心停止後1日で、血中のビタミンC濃度は通常の50%以上に減少し、3日後には欠乏する(8)

・ビタミンEやグルタチオンはビタミンCの枯渇後にのみ酸化される。

・集中治療室(ICU)患者の低ビタミンC値は、昇圧剤の必要性、腎障害、多臓器機能不全(SOFAスコア)、死亡率と関連していた(図1および2)。ビタミンC欠乏群では、SOFAスコアは8点高く(これは2つの臓器が完全な機能不全であることを意味する)、死亡率は6.9倍高かった(8)。

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・敗血症においてもビタミンC値と多臓器不全の関連が示されている(9)。

ICU患者では、1週間の経腸栄養(ビタミンC700mg含)後でも、大部分の患者の血漿濃度は不十分であった(10)。  

 

 

高容量ビタミンCの理論   

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1. スーパーオキシド(O2- )のフリーラジカルを除去する。

2. キサンチンオキシダーゼおよび 3. NADPHオキシダーゼの活性化を阻害する。

4. 電子伝達系の障害によって増加する酸化ストレスからミトコンドリアを保護する。

5. ジヒドロビオプテリン(BH2)からテトラヒドロビオプテリン(BH4)を回復させ、血管内皮のeNOバイオアベイラビリティーを増加させる。

6. 誘導型NOS(iNOS)の活性化を阻害し、iNOの産生およびペルオキシナイトライト(ONOO-)の生成を妨げる。

7. ONOO-を捕捉し、血管内皮のタイトジャンクションの弛緩を防ぐ。

8. α-トコフェロールを還元し、脂質の過酸化を防ぐ。

 

ビタミンCの薬物動態

・重症患者では、ビタミンC血中濃度は低く、最低3g/day必要としたという報告がある(13)

・能動輸送により、脳脊髄液のビタミンC濃度は血漿の約4倍、細胞内は25~80倍に保たれている。

・顆粒球、赤血球および血小板のビタミンCは、血漿濃度および酸化ストレス誘発トランスポーター発現に関連する。 

 

 

 高容量ビタミンCの安全性

・重症位感染症患者では200mg/kg/day(3)、癌患者では1500mg/kgを週三回で安全性が確認されている(15)。

・ビタミンCはFe3+からFe2+など、触媒金属を還元しROSを引き起こすため、ヘモクロマトーシスの症例は除外されている。  

 

 

心停止後に対する高用量ビタミンC

・動物モデルで3試験のみ。すべて、ラットの心房細動/電気ショックモデルであった。

・2つの試験では、ビタミンC(50および100mg / kg i.v.)投与で、心筋損傷を減少し、生存率および神経学的アウトカムを改善した(16,17)。心筋の酸化ストレス(マロンアルデヒド濃度)は有意に減少し、効果は自発循環が戻った後にも観察された。

・またビタミンCとDHA(ビタミンCの酸化型)を250 mg / kg投与した別の試験では良い結果は出なかった(18)。  

 

 

高容量ビタミンCと心筋虚血/再灌流障害

・動物試験では、高容量ビタミンCは梗塞サイズを減少させた(19-22)。しかし減少させなかった研究もあり(23-25)、また糖尿病のみ減少(19)したり、酸化型ビタミンC(26)や、グルタチオンとの併用(27)では効果は認められなかった。

・高容量ビタミンCは、心室細動心室頻拍および心室期外収縮(27-31)など再灌流不整脈を減少させたが、有意ではないものもあり(28)、ビタミンCとデフェルオキサミン(deferoxamine)またはグルタチオン(27)を組み合わせた場合にのみ有意な減少が認められたものも。

・ビタミンCは、すべての研究ではないが、多くの研究(19-21)において、心筋虚血後の左心室機能を改善した。改善しなかった報告(23)  臨床試験・周術期心筋損傷はPCIの15〜35%で発生し、長期死亡率、再発性梗塞、際血管新生と関連している。

・選択的PCI前のビタミンC投与により、酸化ストレスを改善させ、大規模試験において(n=532)、周術期心筋損傷を減少させた(35)。

・ビタミンCは微小循環再灌流を著しく改善し、対照群では39%だったのに対し、79%の患者がTIMI心筋灌流グレードIIIに達した(34)。

(・メカニズムは、ビタミンCはNO補酵素であるテトラヒドロビオプテリン(BH4)の酸化を防ぎ、NOのバイオアベイラビリティを増加させる。)

 

 

人工心肺を用いた心臓手術

・心臓手術後のビタミンC低値とROSの発生が関連していた(37)

・人工心肺前とクランプ解除後の高容量ビタミンC投与は酸化ストレスおよび、心筋損傷を減少させた(38)。

・ビタミンCとEのサプリメントを術前摂取することで、酸化的ストレスのマーカーと心電図の虚血性変化が減弱した(39)。

・心臓手術後の心臓リズム障害の最も頻繁なタイプは心房細動であり、発生率は10%〜65%であり、死亡率のリスクが高い。

・メタアナリシスにおいて、ビタミンCは発作性心房細動の発生率を有意に低下させた(OR=0.47(95%CI:0.36-0.62; p <0.00001)(40)。

 

 

高容量ビタミンCと脳虚血/再灌流障害

・脳は多くの酸素を必要と、酸化ストレスに弱い。脳細胞にはビタミンCがミリモル濃度で保たれている。

・脳の虚血が起こると、虚血領域の細胞外に大量のビタミンCが放出され、細胞内ビタミンCレベルは著しく急速に低下する(41)

・ビタミンCはBBBをDHAの形でGLU1を介して通過し、グルタチオンや他細胞内チオールによりビタミンCに変換される。

DHAの静脈内投与は、ビタミンCと比較して、より効率的にDHAを取り込むため、脳虚血の研究の大部分は、DHAに焦点を当てている。

DHAがビタミンCに変換されると、多面的な神経保護作用を発揮する。

・ビタミンCは、ROSによってブロックされる星状細胞への、グルタミン酸の取り込みを改善する。

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Preclinical stadies

・マウス、ラット、サルの大脳虚血モデルでは、DHAは死亡率を減少させ(42)、梗塞サイズを減少させた(42-47)。

・閉塞の10分後のDHA100mg / kg(腹腔内[i.p.])投与で、24時間後の梗塞サイズが50%減少した。また静脈投与で、脳における低ビタミンCレベルを改善し、脳の酸化傷害および浮腫を減少させた(43,44)。

・梗塞前にビタミンC 2g ivで前処置したサルでは、梗塞サイズが22%から7%に減少し、スナネズミではビタミンCにより線条体が保護された(48)。(大脳皮質、海馬および線条体は、虚血に虚弱な領域である。)  

 

 

Clinical stadies

脳卒中患者のプラセボ対照試験では、ビタミンCの効果は認められなかった(50)。容量が 500mg /日と少なく、脳卒中1日後という脳損傷が不可逆的になってからの開始であったことが原因と考えられる。  

 

 

結果を出すための虚血/再灌流障害に対するビタミンC投与

・ビタミンCのスカベンジャー効果は血漿ビタミンC濃度が1-10mmol/lは最低でも必要・ROSの大量放出は再灌流後、数分以内に起こる。このため、投与のタイミングが遅いと、結果は出ない可能性がある。(50)など

・CPR後は酸化ストレスが強いので、DHAではなくビタミンC投与で十分、ビタミンCは酸化されDHAとなって脳に届くと考えられる(ビタミンCの投与が良いのではないか?)など