増田陽子のビタミンCブログ

ビタミンCから、分子栄養学や機能性医学、予防医学、アンチエイジングの世界を知りました。ビタミンC療法のメッカであるリオルダンクリニックで勉強中です。勉強したことの記録ですが、読んだもの全てをまとめているわけではなく、勉強になったことを書き出している感じです。

がんに対するビタミンCの効果、メカニズムについてのレビュー②

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6037948/

 

Potential Mechanisms of Action for Vitamin C in Cancer: Reviewing the Evidence

Margreet C. M. Vissers et al. Front Physiol. 2018; 9: 809.

 

いよいよビタミンCのがんに対するエピジェネティックな効果です。 

ビタミンCの「抗酸化物質」以外の、また、「過酸化水素発生」以外の効果について書かれています。

 

 

・低メチル化は転移、がん遺伝子の転写を活性化する(Berman et al。、2011; Ehrlich and Lacey、2013)というのが、前提条件としてあるのですが、その上で、

 

・ビタミンCのエピジェネティクスにおける役割が注目されている(Lorsbach et al。、2003; Monfort and Wutz、2013; Young et al。、2015; Camarena and Wang、 2016; Gillbergら、2017; Cimminoら、2018; Mastrangeloら、2018)

 

というのが、今日のメインの内容です。

 

予備知識:

・TETタンパクにより行われる酸化により、DNAの脱メチル化が引き起こされる(Heら、2011; KohliおよびZhang、2013

・JMJCファミリーは一、二、および三メチル化ヒストンリジン残基を脱メチル化する、20以上のタンパク質を含む(Tsukadaら、2006; Monfort and Wutz、2013)

・AML患者の大規模なコホート研究によると、TET2変異は患者の約10%、JMJCの変異は、〜1%の患者であった(Ley et al。、2013; Papaemmanuil et al。、2016)

・イソクエン酸を2-OG(TETおよびJMJC酵素に必要な補因子)に変換するIDHとTET2の変異は排他的。突然変異体IDH(mutIDH)は、2-ヒドロキシグルタレート(2-HG)を生成し、TET2を阻害することによって造血を阻害する(Figueroaら、2010; Losmanら、2013)。 

 

その上で、

アスコルビン酸はTETおよびJMJCファミリーの適切な活動に必要であり、(Klose et al。、2006; Tsukada et al。、2006; Minor et al。、2013)

・TET2またはIDHのいずれかの変異をもつ白血病マウス/細胞モデルにおいて、アスコルビン酸が細胞機能を回復する研究が次の3つ(Agathocleousら、2017; Cimminoら、2017; Shenoyら、2017) 説明されています。

 

 つまり、アスコルビン酸が少なくとも白血病モデルにおいて、TET2活性をアップレビュレートすることによって、TET2欠損の影響を緩和することを示している。 

 

 

詳細:

 

・Cimminoら(2017)は、TET2ノックアウトにより、自己複製、骨髄系マーカーの喪失、過剰なメチル化およびメチル化された遺伝子転写が減少し、またTET2の修復とアスコルビン酸(250μM)のいずれもが、これらの結果を逆転させたこと、またカタラーゼを添加しても、アスコルビン酸の効果に変化はなかったことを示した。

 

・Agathocleous(2017)らは、Tet2欠損、Gulo欠損、Flt3ITD(Tet2欠損と伴ってAMLを誘発する変異)の様々な組み合わせをもつ、様々なマウスモデルを使用し、

・ヒトおよびマウスの造血幹細胞はアスコルビン酸濃度が高く、アスコルビン酸輸送体Slc23a2の発現と相関した。

・Glo欠損マウスにおいてTET2活性低下に一部起因する造血幹細胞の増加を認めた。

 

・Mingay (2018)らは、IDH1R132Hを発現するHOXA9-不死化マウス骨髄細胞を使用し、アスコルビン酸(345μM)添加が、DNA脱メチル化を促進し、プロモーターの脱メチル化、またいくつかの重要な造血遺伝子の発現を増加させることを示した。

 

 

これらの研究からメチルトランスフェラーゼ阻害剤との併用については、

・60-86歳の高齢患者において、アスコルビン酸をデシタビン+アクラルビシン+シタラビンに併用した群としなかった群では、アスコルビン併用群の寛解期間が有意に長く、全生存率が高かった。(Zhao et al。、2018)

ただし残念ながらこの研究の患者について、TET2変異は検査されていなかった。

 

 

がんにおけるアスコルビン酸の薬理学的考察

・Gulo欠損腫瘍マウスへの高用量の腹腔内投与後24時間以上で、腫瘍内のアスコルビン酸濃度の上昇が持続していた(Campbell et al。 、2016b)

・Gulo欠損マウスにおいて、アスコルビン酸連日投与は隔日投与に比べ抗腫瘍活性が高かった(Campbellら、 2016b)

 

アスコルビン酸の血管からの拡散は、細胞周囲を拡散した細胞層へ広がることがインビトロモデルで認められた(Kuiperら、2014c)

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血漿濃度に関連したアスコルビン酸の分布

・壊血症レベル(10μM):アスコルビン酸は組織に到達できない。

・「健康であるが飽和していない」レベル(50μM)または組織の飽和(100μM)レベル:組織のアスコルビン酸は血管に近いほど高くなる。組織のアスコルビン酸は100μm(図の黒いバー)までしか届かず、これは十分灌流されている組織の血管の平均的な距離である(Ludkeら、2009、2010; Voltaら、2013)

・ビタミンC点滴レベル(1mM):100μmを超えてビタミンCが灌流する。(Kuiper et al。 (2014c)