ビタミンCの生理学的特徴について
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/odi.12446
Vitamin C: the known and the unknown and Goldilocks
SJ Padayatty. Oral Diseases (2016) 22, 463-493 doi: 10. 111/odi. 12446
ビタミンC欠乏症状は、11.4μM(0.2mg / dl)未満で起こると考えられている。(Jacob et al、1987; Schleicher et al、2009)
ビタミンCの酸化剤としての働き:
1. 銅や鉄などの金属を還元
2. スーパーオキシドや過酸化水素を形成
3. スーパーオキシドなどから活性酸素種を生成する
これらの反応は、ミリモル濃度の血漿、細胞外液でインビボで起こる。(金属が存在すればVCが生理学的濃度で存在する細胞培養培地でも起こり得る(Parrowら2013)。)
アスコルビン酸は電子を一つ失い、アスコルビン酸ラジカルに、2つ失うとDHAになる。
・アスコルビン酸ラジカルは(酸素や鉄などの電子受容体が存在しない場合)、半減期が数秒〜数分にもなる(Buettner、1993)。通常のラジカルは1ミリ秒くらい。
・DHAはより安定しており、半減期は数分。DHAはグルコーストランスポーター(GLUT)で輸送される(Rumsey et al、1997、2000a; Corpe et al、2013)。
・DHAとアスコルベートラジカルいずれも可逆的にアスコルビン酸に還元されるが、DHAの環構造が失われ、2,3-ジケトグロン酸になると不可逆となる
ビタミンCが還元剤として働く酵素(Englard and Seifter、1986; Levine、1986、Levine et al、2006)
・モノオキシゲナーゼ
① ドーパミンb-ヒドロキシラーゼ
② ペプチジルグリシンアミド化モノオキシゲナーゼ・ジオキシゲナーゼ
③ プロリル4−ヒドロキシラーゼ(6種)
④ プロリル3−ヒドロキシラーゼ
⑤ リシルヒドロキシラーゼ
⑥ アスパラギニルヒドロキシラーゼ
⑦ トリメチルリジンヒドロキシラーゼ
⑧ c−ブチロベタインヒドロキシラーゼ
⑨ 4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ
・⑩アミンオキシダーゼ
酵素 | 酵素の働き |
哺乳類の酵素 | |
ドーパミンb-モノオキシゲナーゼ | ノルエピネフリン生合成(Levine et al、1991) |
ペプチジルグリシンα-アミド化モノオキシゲナーゼ | ペプチドホルモンのアミド化(Prigge et al、1999) |
プロリル4-ヒドロキシラーゼ | コラーゲンヒドロキシル化(Prockop and Kivirikko、1995) |
コーラゲンアイソザイム(3種類) | |
プロリル3-ヒドロキシラーゼ | |
リシルヒドロキシラーゼ | |
プロリル4-ヒドロキシラーゼ | 低酸素誘導因子(HIF)水酸化(Myllyharju、2008年) |
低酸素誘導因子(HIF)アイソザイム(3種類) | |
アスパラギニルヒドロキシラーゼまたはFIH-1(HIF阻害因子) | HIFの調節(Dann et al、2002; Lando et al、2002) |
トリメチルリジンヒドロキシラーゼ | カルニチン生合成(Rebouche、1991a) |
γ-ブチロベタインヒドロキシラーゼ | |
4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ | チロシン代謝(Lindblad et al、1970) |
フラビンアデニンジヌクレオチド依存性アミンオキシダーゼ | ヒストン脱メチル化(Tsukada and Zhang、2006) |
(リジン特異的デメチラーゼ1) | |
真菌酵素 | |
デオキシウリジン10-ヒドロキシラーゼ | ピリミジンまたはデオキシヌクレオシドのデオキシリボース |
チミン7-ヒドロキシラーゼ | 部分の再利用経路(Stubbe、1985; Wondrack et al、1978) |
ピリジンデオキシリボヌクレオシド20-ヒドロキシラーゼ |
詳細:
① 神経系、副腎ノルエピネフリン合成に必要(Levine et al、1941b)。合成反応でビタミンCは消費される(Stewart and Klin man、1988; Fleming and Kent、1991)
② 視床下部や消化管ホルモンなどの分泌小胞にあり、ビタミンCを消費する(Prigge et al, 2000)。ペプチドホルモンを活性化させるために必要(Glembot-ski、1986; Eipper and Mains、1991; Priggeら、2000; Kumarら、2015)
⑦、⑧リシンおよびメチオニンからのカルニチン合成に必要(Dunn et al、1984)
⑩ チロシンの異化作用に必要で(Lindblad et al、1970)、アスコルビン酸が欠乏すると、チロシン異化障害によりチロシン血漿中濃度が増加する(Levine et al、1941a; Englard and Seifter、1986)
コラーゲンの水酸化:
アスコルビン酸欠乏で起こる壊血病の症状には、創傷治癒の遅れ、歯肉の緩みがあるが、これらは正常な結合組織が作られないことを示している(Crandon et al、1940; Lind、1953; Hirschmann and Raugi、1999)。
ビタミンCは、プロコラーゲンの酵素反応を触媒し(Peterkofsky、1991、Kivirikko and Myllyla、1985; Prockop and Kivirikko、1995)、結合織の強度を高める。
(小胞体で合成されたプレコラーゲンのプロリンは3-ヒドロキシプロリンまたは4-ヒドロキシプロリンへ、リジンはヒドロキシリジンにヒドロキシル化されるが、この時に酵素として働くプロリル3-ヒドロキシラーゼ、プロリル4-ヒドロキシラーゼ、リシルヒドロキシラーゼの補酵素がビタミンCである。(Peterkofsky、1991; Prockop and Kivirikko、1995; Pekkalaら、2003)
・ヒドロキシル化がないと、プロコラーゲンの分泌は減少する(Peterkofsky、1991)。
・ビタミンCがなくてもいくらかのヒドロキシル化が起こる可能性があります(Parsons et al、2006)。
・またこの反応とは別に、アスコルビン酸はコラーゲン合成を刺激することも示されている(Geesinら、1988; Sullivanら、1994)。
HIF-1の水酸化:
HIF-1aはHIF-1bと二量体を形成し、DNAに結合して標的遺伝子の転写を活性化させ(Dengler et al、2014)、発癌などとの関連が認められているが、アスコルビン酸はHIF-1aを水酸化し、プロテアソームによる分解の標的とする(Dengler et al、2014)。
また、培養細胞中のアスコルビン酸欠乏はヒドロキシル化を阻害し、HIF-1aを安定化させ(Kaczmarek et al、2007)、逆にアスコルビン酸を投与すると、細胞培養中のHIF-1活性は阻害され、HIF-1刺激に特異的な遺伝子転写は妨げられた(Kuiperら、2014; Vissersら、2007)
低酸素下でもHIF-1aのヒドロキシル化が阻害され、HIF-1aが安定化する。またHIF-1は様々な疾患に置いて、赤血球生成の抑制に寄与している(Franke et al、2013)。肺疾患(Shimoda and Semenza、2011)。心臓病(Semenza、2014)。糖尿病(Catrina、2014; Ichiki and Sunagawa、2014)。そして癌(Semenza、2013; Borsi et al、2015)
HIF-1はFIHにより阻害され、負に調整されているが、FIHはヒドロキシラーゼであり、アスコルビン酸を必要とする(Flashman et al、2010)。