増田陽子のビタミンCブログ

ビタミンCから、分子栄養学や機能性医学、予防医学、アンチエイジングの世界を知りました。ビタミンC療法のメッカであるリオルダンクリニックで勉強中です。勉強したことの記録ですが、読んだもの全てをまとめているわけではなく、勉強になったことを書き出している感じです。

敗血症に対するビタミンC SOFA、CRP、プロカルシトニンが著名に下がったという論文 Phase1

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3937164/

Fowler AA 3rdet al. J Med. 2014 Jan 31;12:32. doi: 10.1186/1479-5876-12-32.

Phase I safety trial of intravenous ascorbic acid in patients with severe sepsis.

 

ARDSに対するビタミンCの二重盲検無作為比較試験で、死亡率が凄いことになっているPhaseⅡの試験が、「もうすぐCHESTに載る予定」と9月のカンファレンスで伺ってから、ずっと楽しみにして待っています。PhaseⅡの内容は色々な意味ですごかったので、、、載ったら絶対ご紹介しようと思います。今回はそのPhase Ⅰ の試験です。

 

24人のICUの重症敗血症患者を、低ビタミンC(50) or 高ビタミンC(200mg/kg/24h)、プラセボで分けた、二重盲検ランダム化比較試験。

重篤な副作用はなく、高ビタミンC群でSOFAの低下、CRP、プロカルシトニンの有意な低下を認めた。有意差は出なかったが、ビタミンC群のトロンボモジュリンは上昇せず、血管内皮障害の減弱を示唆した、という論文。

 

イントロダクション

・15000人以上の患者と10億ドル(1150億円くらい)以上かけて研究されているが、有効な治療はまだ明らかでない(4.5)。

・アトルバスタチン(6)や活性型プロテインC(7)などの炎症や凝固メディエーターをターゲットとした治療はいずれも死亡率を改善することはできず、標的が限られた治療では治療が困難であることが示唆されている。

・敗血症動物モデルにアスコルビン酸静脈投与すると、敗血症の毛細血管血流、微小血管バリア機能、および血管収縮薬に対する細動脈の応答が改善した(8.9)。

・敗血症マウスへのアスコルビン酸静脈投与で、炎症性メディエーターの減弱と、肺胞上皮バリア機能の増強、肺胞クリアランスの増加、および敗血症による凝固の予防効果が認められた(10.11)。

アスコルビン酸欠乏マウスは敗血症による多臓器不全になりやすく、アスコルビン酸静脈投与で臓器不全(肺、腎、肝)が減少した(12)。

・敗血症での異常に低い血中ビタミンC濃度は多臓器不全発生率と逆相関し、生存率と相関する(13)。

 

・ビタミンCが敗血症で低下する原因(14)

1.      血漿遊離鉄の減少によるアスコルビン酸消費

2.      フリーラジカルによるアスコルビン酸の消費

3.      フリーラジカルによるデヒドロアスコルビン酸の破壊

 

・外科的な重症患者594人にビタミンC(1g/8時間)静注と内服ビタミンEを28日間で、急性肺障害と多臓器不全の発生率が有意に低下した(16)

・重症熱傷(体表面積50%以上)の患者に、初めの24時間でビタミンCを持続投与(66mg/kg/hr)し、毛細血管透過性が有意に低下した(17)。

 

Methods

・対象

1,  全身性炎症反応(BT:>38℃または<36℃、HR:>90拍/分、WBC:> 12,000 /μLまたは<4,000 /μL または>10% BAND)

2, 感染症またはその疑い

3, 敗血症による臓器不全:動脈血低酸素(PaO2 / FiO2 <300)、収縮期血圧(SBP)<90 mmHgまたは40mgHg以上の低下)、Lactate >2.5mMol/L、尿量 <0.5ml/kg/hrが補液に関わらず2時間以上続いた場合、血小板<100,000未満、INR> 1.5、ビリルビン> 2mg / dL。これらをICU入室後48時間以内に満たした場合、インフォームドコンセントが行われ、その後2~4時間後から試験が開始された。

 

・点滴は6時間毎に30分以上かけて、96時間まで継続した。

アスコルビン酸はBioniche Pharmaの製品が使用された。

・ビタミンCが酸化されるのを防止するため、点滴役は茶色のカバーで多い、IVバックから空気は抜いた。

・臓器不全の評価はSOFAスコアを用い、24、48、72、96時間で評価した。

・投与中は5分毎にバイタルが観察され、点滴終了後45分まで継続した。

・点滴は4日行われ、その後28日間患者は観察された。

・血中ビタミンC濃度の測定は点滴前、12, 24,36,48,72,96時間後に行われた。

 

Result

・1年かけ35人がスクリーニングされ、26人が試験に参加した。

・除外された9人は、3名が進行癌で24時間以上生存しないと考えられ、2名のホームレスの患者はインフォームドコンセントが得られず、4人は家族が拒否した。

・高ビタミンC群のうち、後に家族が撤回した患者が1名、血球貪食症候群が指摘され撤回した患者が1名おり、この2名は除外された。

・有害事象はなし

・試験前の平均血中アスコルビン酸濃度は、17.9±2.4μM(正常範囲50〜70μM)

プラセボ群の血中濃度は4日かけて徐々に低下、低アスコルビン酸群、高アスコルビン酸群ともに4日後には著名に増加、高アスコルビン酸群は12時間でもプラセボに比べて著名に増加した。

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・SOFAスコア:アスコルビン酸群はいずれも著名に低下した。プラセボ群は緩やかに増加した。

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バイオマーカー :

アスコルビン酸群はいずれもCRPの著名な低下を24時間で認めた。

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・高アスコルビン酸群で48時間でプロカルシトニンが有意に減少させた。

・トロンボモジュリンは有意差は出なかったが、アスコルビン酸群はいずれも上昇せず、プラセボ群は48時間ごから増加した。

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Discussion

CRPやプロカルシトニンは死亡率や臓器不全に強く関連することが知られている(19.20.21.34.)

CRP半減期は19時間であり、炎症のモニターに役立つ

・トロンボモジュリンは血管内皮細胞の障害に関連し(35)、臓器不全や死亡率に関連する(36)

アスコルビン酸はミリモル濃度で血管内皮細胞に急速に取り込まれ、そこで活性酸素を除去し、テトラヒドロビオプテリンを回復させることで、一酸化窒増素を増やす。

・敗血症で起こるNFκBの活性を阻害することで、サイトカインストームを弱める(10.11.37)。

・敗血症でのアスコルビン酸欠乏好中球は、正常なアポトーシスを起こさず、壊死して加水分解酵素を放出し、臓器障害を増悪させる。

・毎年、重症敗血症で数万人が亡くなっている(1.38-40)