増田陽子のビタミンCブログ

ビタミンCから、分子栄養学や機能性医学、予防医学、アンチエイジングの世界を知りました。ビタミンC療法のメッカであるリオルダンクリニックで勉強中です。勉強したことの記録ですが、読んだもの全てをまとめているわけではなく、勉強になったことを書き出している感じです。

膵癌に対するビタミンCの効果と機序

https://www.nature.com/articles/s41598-017-17568-8

 

High Dose parenteral Ascorbate Inhibited Pancreatic Cancer Growth and Metastasis: Mechanisms and a Phase 1/2 study 

Kishore Polireddy et al. Scientific Reports 7, Article number: 17188 (2017)

 

A4M総会 に参加するためラスベガスに行っており、ブログをお休みしていましたが、今日から再開します。

 

今日は膵癌に対するQi Chen先生のグループからの論文です。とても読み応えがある面白い論文です。

VCの薬理学的濃度に暴露された膵癌細胞においてNAD+が枯渇することにより、

・ATPが減少し細胞毒性が発現

NAD+が、αチューブリンの脱アセチル化酵素(Sirt2)の補酵素であることから、VCはαチューブリンのアセチル化を増加させること

が報告されています。

 

 

つまり、腫瘍細胞の有糸分裂や運動性を阻害することで、細胞増殖や転移を防ぐ効果が期待される、という内容です。

 

(*わかりにくいので追記しますが、αチューブリンが脱アセチル化すると、癌化や転移を促進すると言われていますが、ビタミンCはアセチル化することで、それを濃度依存性に 防ぐよ、という内容です)

 

背景:

膵臓がんでは、ゲムシタビン単独またはゲムシタビンとEGFR阻害剤、エルロチニブと、IVCを併用(毎週50~100g /注入2~3回)した群での小規模試験が2つ報告されているが、Montiら11)およびCullenら12)、いずれもIVCは化学療法に対する毒性を増加させず、モンティの試験では、9人の患者のうち8人が治療8週間後に腫瘍が縮小し、カレンの試験では、Nが非常に小さかったにもかかわらず、OSが対照群に比べ倍増した。

 

最近のトピックとして、アスコルビン酸がKRASおよびBRAF突然変異大腸癌細胞に対して優先的な細胞毒性効果を有することを示されているが(14)、膵癌でも90%以上にKRAS突然変異が存在する(15)ため、膵臓癌に対する治療効果も期待されている。

 

他のがんでも、卵巣癌ステージ3,4において、化学療法(パクリタキセル/カルボプラチン化学療法)VS化学療法+IVC(75-100g /注入、週2回、1年間)のパイロットスタディが行われ(9)、IVC処置は化学的関連毒性を有意に減少させ、統計的に優位ではなかったが、疾患の進行/再発の中央値は8.75カ月延長された。

 

非小細胞肺癌(NSCLC)および多形神経膠芽細胞腫(GBM)においても同様の良好な忍容性が報告されている(13)。

 

結果:

1. 8つのタイプのヒトすい臓がん細胞と1つのマウスすい臓がん細胞(KRASやP53変異を伴う一般的なもの)に対してアスコルビン酸(〜20mM)暴露させ(19)、多くが細胞数が減少したが(IC50値は5mM未満だった)、逆にカタラーゼ添加では減少しなかった。

 

2. 1mM濃度(亜細胞毒性)では、細胞生存数は変わらなかったが、遊走性、浸潤性を阻害できた。

・膵癌は上皮間葉移行(EMT)で浸潤することが多いが、 EMTマーカー(Snail)や間葉マーカー(Vimentin and N-cadherin、MMP)がVCで減少(図1D,E)⇨EMTの減少

・膵癌PANC-1細胞において、VCは容量依存性にMMP-2の発現を低下させ、MMP-2によるゼラチン分解活性も容量依存的に減少させた。(図1G)

 

3.  細胞毒性〜亜細胞毒性濃度(1.25〜2.5mM)で、膵癌細胞(PANC-1およびBxPC-3細胞)では容量依存性にαチューブリンアセチル化が認められた(図2A,B)が、非癌性膵管上皮細胞hTERT-HPENでは最小限で、H2O2処理ではVCと同様の結果だった(図2B)

⇨αチューブリンを安定化させるVCの作用が薬理学的濃度でのH2O2に依存していることを示す。

 

4. PARPはNAD+を利用する(31)が、PANC-1およびBxPC-3細胞ではVCは容量依存性にNAD+レベルの低下を引き起こし(図2C)、それに伴いATPの低下も引き起こした(図2D)。一方、非癌性hTERT-HPEN細胞では1.25~2.5mMではNAD+の低下はなく、5mMのみで癌細胞より少なく低下した。ATPの低下はなかった。

 

 また、NAD +はチューブリン脱アセチル化酵素Sirt-2の必須補因子(34)で、NAD +の減少により、Sirt-2の活性が阻害され、α-チューブリンアセチル化を増加させた(図S2A)。 

 

 αチューブリンのアセチル化は他にも脱アセチル化酵素(HDAC6)とアセチル化酵素(α-TAT)にも関連するため、それも調べた。

・PANC-1およびBxPC-3細胞の両方において、HDAC6発現の減少が見られた(図S2A)α-TATに変化はなかった。また、HDAC6により、α-チューブリンアセチル化がわずかに逆転したが(図S2B)、細胞死には影響しなかった(図S2C)。 

・α-チューブリンアセチル化と、膵癌細胞の生存率はAsc処理において逆相関した(図3C)(PANC-1、r = -0.98287およびBxPC-3、r = -0.88609)。

 

 

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