増田陽子のビタミンCブログ

ビタミンCから、分子栄養学や機能性医学、予防医学、アンチエイジングの世界を知りました。ビタミンC療法のメッカであるリオルダンクリニックで勉強中です。勉強したことの記録ですが、読んだもの全てをまとめているわけではなく、勉強になったことを書き出している感じです。

ビタミンCと心血管イベント、死亡率を調査した大規模コホート研究

https://www.mdpi.com/2072-6643/9/9/954

 

Vitamin C Intake is Inversely Associated with Cardiovascular Mortality in a Cohort of Spanish Graduates: the SUN Project.

Martín-Calvo NNutrients. 2017 Aug 29;9(9).

 

ビタミンCと心血管イベント(CVD)、死亡率(CVM)を調査したコホート研究。13421人を約11年追跡した。

 

 ・エネルギー調整モデルで高ビタミンC摂取群は、中、低摂取群と比較してCVDのリスクの低下と関連していた。

  (閾値効果またはL字型関連を示唆する。)

・高ビタミンC群は、エネルギー調整モデル、ベースライン時の有病調整モデル、果物や野菜以外の食物繊維の多変量調整モデルでCVMリスクを低下させた。

・食物繊維調整モデルでは、高ビタミンC摂取群は、有意にCVMリスクを低下させた(HR:0.30,95%CI(0.12-0.72))。 

 

Introduction

・観察研究では、食事中のビタミンC(6)や血中ビタミンC値(6-8)が、心血管リスク因子とCVD、CVMと逆相関するとの結果があるが、これらの研究には、食物繊維など交絡因子の調整において、限界があった。

・食物からのビタミンCと、人工のビタミンC(サプリなど)は生物学的に同様に利用可能である(9)

・しかし、観察研究(6)と臨床試験(10-13)では、ビタミンC(500~1000 mg/day)のサプリ摂取で、心血管イベントに影響はなく、さらに観察研究(14)と、介入研究(15)では、逆にビタミンC摂取群でCVD、CVM上昇が報告されている。

・一方、2つのメタアナリシスでは、高容量のビタミンC摂取群(500~2000mg /日 と 500~4000mg /日)で内皮機能の改善(16)と、血圧の低下(17)が認められた。

 

Materials and Methods

・事前にアンケートで、136品目の食品や飲み物、サプリメントの頻度や量を調べた。

・他、生活習慣(身体活動、テレビ視聴、喫煙状態)、心血管リスク因子(高血圧、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、糖尿病)、癌および心血管関連疾患、脳卒中、心血管疾患の家族歴や、薬物療法も事前に調査した。 

・ビタミンCの摂取量は、多い群で320-1110mg/day, 真ん中の群は206-319mg/day、少ない群は0-205mg/dayでした。

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Results

・ビタミンCを多く取る群は、より高齢で女性で、最近の喫煙歴が少なく、身体的活動が多く、テレビをみる時間が少なかった。また動脈瘤心不全、高トリグリセリドは少なく、おそらく高齢であるため、がん、高血圧、糖尿病、高血圧、静脈血栓症は多かった。

  

CVD:

・ビタミンCを多く取る群は、年齢調整モデル(多変数調整モデル1)において、CVDリスクの低下を示した(表2)。ベースラインでの有病者調整モデル(多変数調整モデル2)、食物繊維量調整(多変数調整モデル3)を追加しても結果は同様。

・地中海食調整モデル(多変数調整モデル4)では、ビタミンC摂取を1/3ずつ分けて最も高い群は中、低い群と比較して、有意にCVDの低下を示した(HR(95%CI):0.60 (0.40-0.91)および0.62(0.40-0.97) 

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CVM:

・年齢調整モデルにおいて、高ビタミンC摂取群とCVMに有意な逆相関が認められた(表3)。

・年齢調整および性調整モデル(多変数調整モデル1)、ベースラインでの有病者調整モデル(多変数調整モデル2)でも同様であった。

・総繊維摂取量で調整すると有意差はなかった(HR(95%CI):0.48(0.19-1.20))く、地中海食を含む完全調整モデルでも有意な結果はなかった。

・他、フォローアップ(p = 0.70)、食物繊維摂取(p = 0.42)、ビタミンCサプリメント摂取(p = 0.12)のいずれも、全ビタミンC摂取量とCVMの間の関連に影響はなかった。 

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総繊維量を調整したモデル:

・CVDの累積リスク:高ビタミンC摂取群は0.07%、低摂取群は0.12%、有意差はなかった。

・CVMの累積リスク:高ビタミンC摂取群は 0.01%、低摂取群は0.05%、有意にリスクを低下させた(HR(95%CI):0.30(0.13-0.73))MDSを調整しても結果は変わらなかった。 

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Discussion

・ビタミンCは動脈硬化の鍵である、LDLコレステロールへの酸化的変化を防ぎ(31)単球の接着を減少させる(32)

・ビタミンCは、プラークの不安定化の原因となる、血管平滑筋細胞のアポトーシスを防ぎ(33)、血圧の低下に寄与する、内皮の酸化窒素産生を改善する(34)。

・すでに観察研究において、ビタミンCと高血圧(6)や心不全(7)が逆相関することが報告されているが、これらは食物繊維摂取量を考慮していない。・ビタミンC摂取によるCVMリスクの低下は、観察研究で報告されていたが(8)、ランダム化比較試験では確認されていない(10.11)。 

・ビタミンCと食物繊維は高度に相関(r=0.72)しているため、食物繊維調整モデルのビタミンCは184(57), 266.7(20.5), 387.7(75.6)とバラツキが小さかった。(このため有意差が出にくい)

・ビタミンCサプリが心血管系イベントに影響を及ぼすかの介入研究を行ない(10-13)有意差は認められなかったが、ビタミンC投与量は3.4~440mgと、他の介入研究に比べてとても少なく、コントロール群でもビタミンCやマルチビタミンサプリが許可されていた。 

・弱点:

 食物などの暴露情報が自己申告、一般集団のサンプルではない、考慮されていない交絡因子がある可能性がある(ビタミンEなど)